KM展望-後編:暗黙知のハンドリング
これからのKMシステム
KMのためのシステム環境整備として、従来のいわば書庫としてのシステムに加え、ナレッジワークを支援するシステム:CAKMが要求されます。KM展望 -前編(1)でご報告した従来のKMシステムは、形式知のみを対象にしています。これらに加えて今後、知的生産性自体の向上をサポートするCAKMの機能として、どのような方向性が考えうるでしょうか?次世代KMシステムの方向性として、秀玄舎およびパートナーの取組みの中から、以下の2つの可能性をご報告し、2004年現在におけるKM展望のご報告を終了します。
→ソーシャルネットワークサービスシステム
従来のKMシステムでも、Know-Howに加えてKnow-Whoを伝えるための仕組みが実装されていますが、米国を中心に欧米では、この Know-Whoをさらに発展したソーシャルネットワークサービス(注)が盛り上がりを見せています。ソーシャルネットワークサービスとは、実社会の人的ネットワークの管理や構築を支援するサービスです。
ソーシャルネットワークは、組織外からのナレッジチャネルの獲得を期待できます。情報のボーダレス化がすすむ現代では、知識資産ネットワークを自社内にクローズすることは必ずしもその質的維持に寄与しません。むしろ閉じたネットワークであるがゆえに陳腐化してしまう可能性が大きいといえます。日本でもこうしたネットワークの構築が散見されるようになりましたが、文化的な要因もあるのか単なる「知り合いリスト」になっているのが現状です。
そこで、ソーシャル(社会的)の意味を少し狭めて会社組織に適用することにより、インフォーマルでない社内人的ネットワークを発見し、そのコミュニティのもつ力が競争力となると判断できれば投資を行うなどの使い方を提案します。組織構造と無関係なインフォーマルなコミュニケーションをすばやく探知するためのメールシステムや、そこから問題解決フローを抽出するエンジンなどが登場しています。
→発想支援システム
日本における発想に関する研究は世界でもトップレベルにあります。その成果として多数の発想技法が存在し、世界中で活用されています。各種発想技法の中でも、特にKJ法は数十年前からビジネスの利用がすすみ、多くの派生を生みました。会議の際などにほぼ無意識に行われているブレインストーミングも発想技法のひとつです。発想技法として発想を生み出すフレームワークは存在しているものの、コンピューターがそれらを支援するようなコンピュータの特徴を生かしたシステムは未だ実用化されていません。暗黙知を形式知に変換するフェーズを支援するシステムとして、発想支援システムの試行がはじまろうとしています。
注:
例)
orkut(http://www.orkut.com),
mixi(http://mixi.jp/),
GREE.jp(http://www.gree.jp/)