玄録

玄録は、秀玄舎の事例を通した、
実践研究の成果をご報告する不定更新の
ビジネスレポートです。

日本型ナレッジマネジメント

逆輸入されたKM

2004.10.22

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 ナレッジマネジメント(KM)は、もともと日本の業務スタイルを研究したものが米国で実践され手法として確立したものだと言われています。 (参考:「知識創造企業」野中郁次郎1990)80年代の不況下にあった欧米では、日本の経営手法が数多く研究され、そのうち有効なものは標準化され、 90年代後半の経済復興に大きく貢献しました。もともと、チームワークによって高度な暗黙知を組織で共有するワークスタイルは、日本型のワークスタイルであるといえます。 

 しかし、そもそも本家であるはずの日本企業で、そうした明示的なKM の取り組みが、めだって成果をあげることができないのは何故でしょうか。 それは、とりもなおさず「もともと日本の経営手法だった」ことが原因にあるようです。

○ ワークスタイルの違い(1)

 欧米企業と日本企業のワークスタイルの相違は、様々な点で発見することができますが、ここではKMアプローチに相関の深い点について言及します。

 どういった文化的要因でそうなるのか、それは別の研究に任せるとして、個人のワークスタイルに焦点をあてた場合、日本が共有分散型の業務であるのに対して、欧米では個人完結型であるといえます。

 欧米型の企業では、ジョブ・ディスクリプション (Job Description ) と呼ばれる明確に個人のミッションを定義した標準がありますが、日本国内の企業でそうした標準定義を備えている企業はむしろ稀だと言っていいでしょう。 ここで議論すべきは、そうした標準化が完了していることの是非ではありません。 日本企業がかつて発揮した強みは、そうした厳格な標準の不在にあったとも言えますので、単純に比較することはできないと考えたほうがよいでしょう。

○ ワークスタイルの違い(2)

 「ドイツの会社では、個人宛の電話を誰かが代理応答するという場面がほとんど無い」これはとあるグローバルな日系事務機器メーカーでKMプロジェクトのヒアリング調査をした際に、役員秘書の方から聞いた面白い現象です。その理由をドイツの担当者数人に聞いてみてもらったところ、「誰かが代理で電話に出たとしても結局対応できないし、対応しても責任がとれない」ことが原因だといいます。 これはあくまでも顕著な例ですが、日本企業が「グループでミッションを共有する」傾向であるのに対して、欧米では「ミッションを個人レベルに分割してプロジェクトをスタートする」傾向にある ということはいえるでしょう。

 日本企業では今日、その特色故に、「責任の範囲が明確でない」 あるいは「組織の意思決定が遅い」といった負の側面が指摘されていますが、知識共有という側面からすれば、非常に有効な環境であったということができます。

 日本と欧米 と型にはめて分類することは、実際の業務分析の場面では非常に危険なアプローチですが、KMを実践するうえでこうした分類を念頭におくことは、手法の検討において有効に作用するはずです。次回では、こうしたワークスタイルの違いが、 KMの手法にどのように影響しているかについて報告します。