玄録

玄録は、秀玄舎の事例を通した、
実践研究の成果をご報告する不定更新の
ビジネスレポートです。

日本型ナレッジマネジメント

日本型KMの模索

2004.11.05

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 ところが、前述のように日本のワークスタイルは、もともとチームでのノウハウの伝達と、それをベースにしたイノベーションを実現してきたため、欧米型のKMアプローチは以下の理由で適合しないケースが多いようです。

– 「ノウハウが自分自身に帰属している」という意識が薄いため、成果物を拠出するメンタリティーがない。
– 業務上の課題は個人の人脈で解決する習慣が見についており、顔の見えない他人のノウハウを取り入れたがらない。
– チーム内で成果を共有していたため、新たに個人として成果物を提供することは確実に「新たな手間」となってしまう。(※)

※ ノウハウの拠出とその促進方法について、「インセンティブを与える」ことしか具体的な解決策として見受けることができません。 しかし、そもそもインセンティブは個人やチームの成績に対して総合的に判断される必要があるため、実績と直接的に関係の見えていない「ノウハウの拠出」に対して独立してインセンティブを設計する という施策が目立った効果をあげていないようです。

 こうした事情から、「欧米と日本とではそもそもスタートとなる課題が異なる」ことに注目し、これまで報告されているいくつかの国内の成功事例を踏まえ、日本型のKMアプローチを2種類にモデル化してみましょう。

■ モデルⅰ) 形式知化にこだわらないKM

 KMというととかく 「暗黙知⇒形式知⇒共有」 という図式がイメージされがちです。(これは一部のシステムベンダーや雑誌などシステム関連の書籍に責任があるといえるでしょう)しかし、KMの目的はあくまで「知識資産を業務や経営に活用する効率を高める」ことです。 暗黙知は暗黙知のまま、その所在の把握や伝達の効率に注目する方法は、特に日本企業では有効だと考えられます。 日本企業では既にチームで知識を共有する下地ができているため、形式知化してから共有するとかえって効率が悪くなる、あるいはそもそも社員がその効果を実感できないからです。暗黙知を暗黙知のまま活用効率を高めるためには、以下のようなアプローチをとります。

– 業務の成果と関係のある暗黙知の種類を定義する。
  (知識そのものを目に見える形にするのではなく、存在を明らかにする)
– 暗黙知の現在の所在と伝達方法、あるいはどのように成果に結びついているかを調査する
– 日常の業務の中での伝達効率や成果に結びつく度合いを促進する。
  (既存のコミュニケーション活動の枠を広げる方法や、専門部署からのアプローチ等詳細は 、別のレポートをご覧ください)

 こうした活動は、組織全体から見ると新しい取り組みに見えますが、現場レベルでは必ずしも新しい取り組みだと認識される必要はありません。 (場合によっては、強く意識させることが暗黙知の意識的な伝達に有効です)組織としては新しい取り組みなため、管理部門に新たなミッションを与える必要があります。 人事部・研修関連部署・情報システム部 等が妥当でしょう。 新たに知識部を設置することも有効です。

■ ⅱ) 欧米型のKMを取り入れる

 欧米型のKMは日本企業にはなじまない と前述しましたが、既存のワークスタイルに拘束されない以下のようなケースでは、十分に効果をあげることができます。

① 部門をまたぐ新たなプロジェクト内や新規事業・組織
② 社外協力先との知識共有 あるいは知識提供型ビジネス
  ( e-Knowledge Market )
③ 既存組織であっても組織をまたぐ知識共有

 90年代後半からの日本国内でのKMアプローチの認識は、硬直化した弊害がありました。 しかし、そうした反省を踏まえて独自の手法で試行錯誤を繰り返す企業の中から、いくつかの成功事例を見ることができるようです。 重要なことは、「知識資産を競争力の源泉」としてとらえるならば、その独自の知識経営が必要になる という認識です。 そのためには、既存の知識と業務との相関関係/因果関係を、まずは正確に把握する必要があるでしょう。