玄録

玄録は、秀玄舎の事例を通した、
実践研究の成果をご報告する不定更新の
ビジネスレポートです。

CIOとIT部門

IT部門への不満:保守的

2005.02.14

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 IT部門に対する「投資のコストパフォーマンス」と並ぶ不満の要因は、「保守的」であること、です。ここでは、文化的な傾向や姿勢の問題ではなく、IT部門が保守的になる本質的な2つの原因について言及します。

 1つは、その生い立ちによるものです。

 eメールやインターネットが普及し、ビジネスのあらゆる場面にコンピューターが登場する1990年代より以前、IT部門は、20年以上にわたって、「EDP部門」「電算室」といった呼ばれ方をしていました。EDPとは、電子データ処理(Electric Data Processing)の意味で、現業部門から発生する膨大な量の伝票を正確・迅速に電子計算するが唯一のミッションでした。

 当時のIT部門の多くは、総務部門または経理部門から派生(またはそうした部門の1セクションとして)していました。完全な間接部門としての生い立ちをもつIT部門に求められたのは、正確・迅速であること(人間がコンピューターに要求するのと同じように)でした。

 一方で、1990年代以降、企業にとってのITは単なる間接業務の範囲を超え、競争力を左右する経営資源になりつつあります。その意味でIT部門に要求されることは、創造的で独自性のある取り組みです。極端な言い方をすれば、Try & Error が許されるような、経営企画的なミッションを担わなければなりません。

 ところが、間接部門として存在してきたIT部門には、戦略部門として機能するためのノウハウや評価制度が無いだけでなく、間接部門としての業務は依然として大きなウェイトを占めているのです。

 もう1つは、ITと現業に対する理解共有の問題です。

 オープン化の産物としてパソコンユーザーの裾野が広がり、インターネットが多くのビジネスマンの常識になりつつある中で、ユーザーがITに期待する内容は具体性を増しています。「社内のこのデータは、もっと簡単に処理できるのではないか?」「顧客データはネットワークで簡単に共有できるのではないか?」

 ところが、様々なリテラシのユーザーに正しく運用されるシステムを、必要な性能とセキュリティ要件を満たしつつ構築したり修正したりすることは、容易なことではありません。このことについて、現業のエンドユーザー部門に正しく理解させることができるIT担当者・責任者はほとんどいないでしょう。その結果、現業部門からIT部門への要求は、「拒絶ともとれるコスト回答」となって返ってきてしまうのです。

 逆に、多くのIT担当者が現業に対する理解が足りないために、現業からの要件を杓子定規に受け止めてしまった結果、「そんなことはできない」という回答をしているケースも数多く見受けられます。現業に対する理解とシステムの現状に対する理解があれば、「その要求は、こんな方法でも解決できるのでは」という回答ができたかもしれません。

 いずれにせよ、IT部門と現業部門との相互理解の不足は、相互の不満となって蓄積してしまうのです。

 本報告シリーズは、コストパフォーマンスも含めてこうしたIT部門・IT投資にまつわる不満をどのように解決すべきかについて実践的な取り組みの例出を試みています。

 次回は、本質的な課題解決の前に、ひとまず目前の不満を回避するためにIT部門が行うべき活動についてご報告します。