玄録

玄録は、秀玄舎の事例を通した、
実践研究の成果をご報告する不定更新の
ビジネスレポートです。

CIOとIT部門

不満への対処

2005.02.22

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 前回までにご紹介したIT部門に対する代表的な不満には、短期的に解消可能な課題と、長期的な取り組みが必要な課題とが内包されています。

 短期的に解消可能な課題は、主に「誤解」や「理解不足」が原因となっているため、その誤解や理解不足を解消する取り組みをはじめることで、比較的容易に対処することが可能です。

 長期的な取り組みが必要な課題は、体制や組織構造、IT部門や現業部門がもっているノウハウや評価体系などが要因であるため、IT部門単独で解決することは不可能です。

 本章では、短期的な課題を解決し、現業部門や経営層からの不満を軽減する手軽な方法について報告します。

 社内サービスにおけるユーザーの満足度は、
期待値の成果のギャップによって増減します。
期待値よりも成果が高ければユーザーはIT部門を賞賛し、
期待値と成果が等しければ満足し、
期待値より成果が低ければ不満を抱きます。

 多くの無責任なメディアやコンサルタントの横行により、現業部門は期待値を高めすぎており、その期待に応えることはことは極めて難しい状況です。まずは現業部門に正確な期待値をもってもらうことが有効です。

 そのためには、システムの様々な要素について地道な啓蒙活動をすべきです。IT担当者は現業部門に日参してシステムの位置づけや将来計画をこまめに説明し、IT責任者は経営層に対してITの可能性と現実について(何が可能で、何が不可能なのか、その理由を)様々な機会で説明しなければなりません。

 例えば、年間のIT投資のうち何割が保守コストとしていわゆる「維持」のために使われているのか、あるいは、IT投資だけでは現業部門の経営指標にインパクトが与えられない理由などについて。最も有効なことは、現業部門の課題に対してIT部門がそれをどのように解決しようとしているのかについて、将来的な計画も含めて情報開示を行うべきでしょう。

 場合によっては、現業部門のシステムに関する意見を聴取する場を設定するのもいいかもしれません。様々な角度でのアンケートを実施し、その結果をユーザーにフィードバックすべきです。

 多くの現業部門は、IT部門の投資内容に不満を持つと同時に、その理由について不信感を持っています。「なぜこの分野のIT投資を据え置いて、そっちに金をかけるのか?」この問いには、全てのIT部門がそれなりの回答を持っているはずです。

 毎回のアンケートは、社員の10%以上の人数を対象にメールで済ませればそれほど手間はかかりません。回答が50%以上来れば、そのテーマについてユーザーの関心が高いと言えるでしょう。年間に5回以上のアンケートを実施すれば、社員の半数以上に大して意見を聴取していることになります。

 アンケートなどを実施する際に重要なことは、アンケートの発信者を工夫すること(場合によってはトップマネジメントの名前で)と、結果を必ずフィードバックすることです。

 投資を含めた活動内容を正しく理解してもらい、ユーザーの意見を取り入れる活動を地道に行うこと、こうしたアプローチは、マーケティングの手法によく似ており、秀玄舎のシステム導入チームは「IT導入におけるマーケティング・アプローチ」と呼んでいます。

 「使わなくても仕事が進む」、いわゆる情報系(基幹系ではない)システムの導入には、こうしたマーケティング・アプローチが不可欠です。

 現業部門や経営層の不満を解消するために、マーケティング的手法でコミュニケーションの質と量を改善することが重要です。

 次回以降は、IT部門に対する不満の長期的・本質的な解決に言及します。