玄録

玄録は、秀玄舎の事例を通した、
実践研究の成果をご報告する不定更新の
ビジネスレポートです。

CIOとIT部門

IT部門が持つ本質的な課題

2005.03.14

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 IT部門の成果に対する、経営層や現業部門からの不満は、前回ご報告した短期的な取り組みである程度軽減することができますが、本質的な解決にはなりません。

 本報告では、IT投資のコストパフォーマンスを追及し、企業の競争力強化に貢献するIT部門の姿を模索しています。そのためには、従来のIT部門が持つ本質的な課題に対処する、長期的な取り組みが必要です。本章では、IT部門が持つ本質的な課題について明らかにしましょう。

 21世紀のIT部門には、大きく分けて以下の3つの機能があります。

 (1) 経理・総務部門的機能
 現業の伝票を電子的に処理し、業務のフルフィルメントを効率化します。取り組みの多くは「効率化」「省力化」「高速化」を目標としています。

 (2) 経営企画部門的機能
 ITを使って新たなビジネスの形態(取引関係やサービス開拓)を模索します。現業をベースにしながらも、新規性が高い場合には「eビジネス」といった言葉が使われることもあります。現業のビジネス環境に対する深い理解が要求されます。

 (3) 情報・知識管理機能
 21世紀の企業において、コミュニケーションや情報管理のほとんどは電子的に行われています。IT部門には、そうした明示的な情報管理をベースに、コミュニケーション手法の設計や改善を通じた情報流通の活性化が要求されています。

 ほとんどの企業のIT部門では、(1)経理・総務部門的機能が最も比重が高いのが実情でしょう。それは、IT部門の生い立ちによるもので、(2)や(3)といった機能要求が出てきたのはここ10年~15年のことです。

 もともと総務部門や経理部門から派生し、電算部門を経由して形成されているIT部門にとって、(2)や(3)といった機能を果たすことは、容易なことではありません。多くの間接部門と同様に、現業経験の無い間接業務専門職の集団であることが多いからです。

 IT部門が持つ本質的な課題のひとつはこの「生い立ちに起因する機能とノウハウのギャップ」です。間接部門出身のIT部門に、直接部門のノウハウが要求されながら、そのノウハウのギャップに対する処方が遅れているのです。

 もうひとつの課題も、原因はその生い立ちにあります。上記列挙したように、IT部門にはいくつかの機能が要求されていますが、それぞれの機能において評価の軸が異なります。
(1)経理・総務部門的機能においては、正確で効率的であることが要求される一方で、
(2)経営企画部門的機能では、新規性や独自性といった、挑戦的な取り組みを要求されます。
(3)では効率的である一方でセキュリティへの配慮が要求されたり、知財に対する理解など、要求は複雑さを増す一方です。

 こうしたいくつもの要求は、多くの場合トレードオフの関係にあって、全てを同時に追求することができません。高度なバランス感覚を要求されます。にも関わらず、IT部門に対する評価体系は、旧来の(1)でしか評価されていません。

 本質的な課題の二つ目は、「要求される機能間の相反」です。

 次回から、こうした課題に対処するための取り組みについてご報告します。