情報システム部門展望
求められる機能 3「知識部」
21世紀は知識経済の時代と言われています。 企業にとって利益の真の源泉はモノやカネといった有形の資産ではなく、無形の知的資産(IP: Intellectual Property) であるとする考え方があります。
商品価値の源泉は、商品そのものではなく、商品を利用するユーザーが得る利得=価値です。その意味で全ての産業はサービス産業化しており、サービス業の競争力はサービス提供のノウハウという無形の知的資産が生み出しているといえます。また、マーケティングにおけるブランド信仰も、こうした無形資産への注目を加速しています。
これまでの日本社会では、終身雇用に支えられた徒弟的教育環境が幸いして、前述のようなノウハウ=無形の知識資産がゆっくりと「醸成」できていました。 しかし、環境変化の高速化や、グローバル化(海外からの競合参入)、人材の流動化やオープン化によって、こうした「醸成」による知識資産の維持が困難になりつつあります。
あるいは、いつまでも徒弟的教育環境に頼っていると、計画的(戦略的)な無形資産投資が不可能なままになり、知識資産を失うことになりかねません。 (無形資産は目に見えないがゆえに失われるのも早い)
計画的に無形の知識資産を維持・向上するために、(人材の流動的な)欧米では早くからCKO (Chief Knowledge Officer…知識管理責任者)という組織(職務)を設置してきました。
日本においてもCKOを設置する会社 あるいは下記のような機能を既存の経営企画室や情報システム部門に新たに追加する会社が増えています。
●会社にとって何が業務に貢献している知識なのか を把握する機能(ミッション)
●知識資産は社内外のどこに存在するのか を把握する機能
●知識資産の獲得・流通に寄与した社員を評価する機能(制度)
●社員が、必要な場所や時に必要な知識を利用できる環境を用意する機能(システム)
「知識部」とも呼べるこうした新しい取り組みは、90年代後半から言葉として頻出するようになった「ナレッジマネジメント」そのものです。
ナレッジマネジメントは、とかく情報システムと同時に語られることが多いために、「新しいシステムの一種」と捉えられがちですが、本来は情報システムとは無関係の活動です。
ただし、前頁で記載した「知識部」機能を保全するために、ITは非常に有効な道具(ツール)になりうると考えられています。こうした考え方を、CAKM (Computer Aided Knowledge Management) =コンピュータが支援するナレッジマネジメント と呼んでいます。
業務の効率化だけでなく、さらなる利益や競争力の源泉となるべきIT投資について検討するにあたって、こうした知識資産の有効利用に役立つITの投資 =CAKMは検討されるべき課題であると言えるでしょう。社内のデジタルな情報を管理できる部署であると同時に、CAKMを導入する部署として、情報システム部門が知識部として機能することで、より戦略的な情報システム部門になることができます。