トラブルを未然に防ぐRFP-前編
ベンダー選定にRFPを有効活用する
<ベンダー選定の重要性>
システム導入プロジェクトにおいて、ユーザ(発注者)とベンダー間でのトラブルが後を絶ちません。
秀玄舎では、トラブルプロジェクトに対するレスキューサービスを実施していますが、トラブルの多くは、ユーザとベンダーの関係性に原因があります。多くのIT関連の書籍や雑誌を見ても、ユーザ、ベンダー間でのトラブル/失敗例が数多く取り上げられています。
たとえば、選んだベンダーにシステム開発を任せた結果、ベンダーのスキル不足(技術的スキル、プロジェクトマジメントスキル、コミュニケーションスキル)からトラブルが発生し、プロジェクト遅延、そしてプロジェクト停止となるケース。このときにユーザ担当者からは、「あのベンダーに頼まなければ、、、」というような非常に残念な声を聞きます。この段階ではプロジェクトは既に手遅れなことが多く、単に人を増やしたりスケジュールを調整するだけでは解決しません。プロジェクトを立て直すためには特別の施策(レスキュー)が必要になります。
あるいは、契約条件、要件定義、設計があいまいで、開発が進んでから、ユーザとベンダー間で「言った、言わない」のやりとりが繰り返され、多くの時間と労力が費された結果、契約、仕様、設計トラブルとなってしまうケース。単純なコミュニケーションミスだから気をつけていれば防げる、などと考えているユーザやベンダーは、かなり高い確率でトラブルに直面します。
ユーザの立場に立つと、上記のようなトラブル/リスクを極力避けるには、ユーザとWin-Winとなれるベンダーを慎重に選定する必要があると言えます。
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ベンダー選定のポイントとしては、実績、ブランド、スキルレベル、プレゼン能力、パッケージの有無、コスト、納期、、、などなど、多くの要素をあげることができます。やみくもに複数ベンダーに要件を投げて提案、見積もりを依頼しても、上記のようなポイントを判断できません。
そこで、ベンダーの選定を効率的に実施し、良いベンダーを見つける方法として、RFP(Request For Proposal)を作成して、ベンダーを選定する手法があります。RFPは、提案要求書、提案要請書とも呼ばれます。
RFPとは、ユーザが情報システム/サービスを調達~導入するにあたり、発注先となるベンダーに対して、具体的なシステム提案を実施するように要求するためのシステム概要や調達要件をまとめた資料を指します。
RFPは、ベンダーを選定することに役立つだけではなく、ユーザ側の要求、つまり、調達条件や契約内容を明らかにしておくことで、混乱を未然に防ぐツールとしても役に立ちます。仕様書や契約が「手段」を確認する書面であるのに対して、RFPは「目的」を共有する書面だからです。
一般的にRFPは、大中規模案件に利用されがちですが、RFPをうまく利用すれば、小規模案件、及びシステム構築に限らない範囲でもベンダー選定に役立ちます。例えば、下記のような案件でも威力を発揮します。
・小規模システム構築(100万~1044万レベル)
・社内PC/プリンタ/ソフトウェア購入先のベンダー選定
・ASPサービスやホスティングサービスのベンダー選定
本シリーズは、システム構築を実施する際における、ベンダー選定、さらにはプロジェクト推進に役立つ、RFPの有効活用についてレポートしていきます。
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RFPは、決して新しい概念や方法論ではありません。現在でもRFPを使用しているユーザも見受けられますが、ベンダー選定やプロジェクト推進のための有用なツールとして利用されることが少なく、その利用範囲はまだまだ広がるだろうと考えられます。